開場前の豊洲市場を見学。思うところあり。

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先日、正式開業前の「豊洲市場」に、見学に行く機会を得ました。

私自身、実家が築地市場の場外で乾物屋をしているので、築地市場の移転は他人事ではありません。

豊洲市場の開場前の見学会で、私なりに感じたことを、まとめてみました。

※豊洲市場の風景。

豊洲市場の問題点

平成30年10月6日、築地市場の営業が終了し、正式に豊洲市場に移転することになりました。

現在の「築地市場」と、移転先の「豊洲市場」との距離感は、次のようなものです。

東京都中央区築地から、晴海を突っ切るイメージです。

この距離感ですが、車で行くと、道が空いていれば、だいたい15分くらいでしょうか?
(信号がスムース、道が空いている場合の最短時間になりますが)

もっと近い場所がなかったんかいな(晴海埠頭あたりでコンパクトに再整備できなかったんかいな)と思うのですが・・・。

上記の簡単な配置図からも分かるように、豊洲市場は次のような問題を抱えています。

アクセスが悪い

豊洲市場へのアクセスは「車」か「電車」になります。

「車」ですと、民間向けの駐車場が少ないので(ほとんどが業者向けの駐車場です。ただ、これも収容台数が少ないと不満が起きていますが)、バスやタクシーといった交通手段になるかもしれません。

※水産卸売場棟の1階の駐車場。

また、電車ですと「ゆりかもめ」しかありません。

※「ゆりかもめ」へ「市場前」出口にて。

この電車、「遅い・高い・乗り継ぎ悪い」の三拍子そろった?電車なので、小売店の人が豊洲市場に仕入れに来るには、大きな負担となってしまいます。

というわけで、豊洲市場へのアクセスは、築地市場に比べたら、極めて悪くなっています。
これが、問題点の一つ目です。

各施設が道路で分断されてしまっている

最初の地図でもお分かりのとおり、新しい豊洲市場の面積は、旧築地市場から、だいたい2倍くらいになっています。

そして、各施設の配置は、次のようになっています。

今までの築地市場は、上記の3施設(水産仲卸、水産卸売、青果)が同じ敷地内にコンパクトに配置されていました。

ですが、新しい豊洲市場は、あえて3施設に分けて、その各施設を太い道路で分断してしまっています。
そのため、徒歩で移動するためには、いったん建物から外に出て、連絡橋(歩道橋)で移動する必要があります。

※こんな感じで、道路間を歩道橋で移動することになります。

実際に移動してみたところ、各施設間は近いように見えて、徒歩で10分~15分くらいかかります。
※いったん施設外に出て、階段を上り降りして、施設に入るため。

こうなると、今まで築地に仕入れに来ていた、街の飲食店(お寿司屋さん、洋食屋さん)は困ります。

というのも、今までの築地市場では、

「水産卸売で魚を買う→徒歩で市場内を移動→青果で野菜を買う」

を、市場内を徒歩で移動し、短時間で済ませることができました。

ですが、今度の豊洲市場では、

「水産卸売で魚を買う→いったん施設外に出て連絡橋を徒歩で移動→青果で野菜を買う」

といった移動になり、とても時間がかかります。

※ですが、そもそも、買い物かごを抱え、不便な電車(ゆりかもめ)に乗って買い出しに行かなければなりませんが・・・。

なお、「水産仲卸売場」と「水産卸売場」との間は地下通路でつながっています。

こんな感じの地下通路があって、水産仲卸場棟の入口には、冷気を逃がさないために(常に強い冷房がかかっています)、次のような自動ドア?があります。

これ、人や車(車は禁止で電動ターレットのみのようですが)が近づくと、自動的に開きます。

この自動ドア?の第一印象は

「ガンダムやSF映画に出てくる宇宙船内の自動ドア?みたいやなぁ~(^^)」

という感じでした。

ただ、地下通路があるのは、ここの区画のみなので、ハッキリ行って、各施設での用事を同時に済ませたい人は、築地市場に比べて、相当、不便になるでしょう。

各店のブースが狭い

こちらは水産卸売場棟の1階ブースですが、各店がとても狭いスペースになってしまっています。

各店の上に、中二階?的なスペースもあるのですが、使い勝手が悪そうです。

こちらは収納スペースになるんでしょうか?

これらの写真のように、各店のブースが狭めに作られており、かつ、使いづらいというのも特徴です。
※微妙な中二階?は、なんなんでしょうか・・・。

建物の階層を高くしてしまった

今までの築地市場の内部は、基本的には平屋建て(2階はなく1階のみ)でしたから、使い勝手が良かったんです。

ですが、新しい豊洲市場の水産卸売場棟は「4階」まであります。
※他の棟も複数階層になっています。

※こんな感じで、エスカレーターで4階まで上がります。

これは、結構、致命的かもしれません。

実際に配達した人なら分かるのですが、市場は「平屋=地上にあること」であるから機能します。
※複数階層であれば、それはもう「市場」ではなく「商業施設(またはショッピングモール)」になってしまいます。

大量の商品を素早く流通させ、瞬時に売買取引をする。
これが市場の役割だと思うんですが・・・。
※偉い都庁のお役人様は、何を考えていたんでしょうか・・・。まあ、組織の限界ですよね。所詮は「他人事」ですから。

豊洲市場の良いところ

豊洲市場の悪いところばかり書いてきましたが、良いところもあります。

市場見学について配慮されている

今までの築地市場では、一部の見学者が勝手に行動し、市場関係者に迷惑をかけていたこともありました。

ですが、新しい豊洲市場では、きちんと見学者を意識した設備造りがなされています。

どうやら「施設見学ツアー」なるものが、開かれるようです。

また、魚の仲卸取引についても、安全に見学できる配慮がされていました。

このガラス内が見学室だそうです。

ここから、実際の魚の取引風景を見学できるそうです。

※こんなイメージになるということでしょうか。見学室内に写真が掲示されていました。

また、小学生や中学生にも配慮がなされているようで、市場内には、次のようなパネルも配置されていました。

私は、小さい頃にお店を手伝っていて、築地市場に出入りしていたので、市場についての基本的にな知識はあるのですが、一般の方からすれば初めての用語ばかりでしょうから、こうやって市場の仕組みを説明するパネルがあると、安心かもしれません。

衛生的である

豊洲市場の安全性については、さんざん議論されてきました。

ベンゼンが検出された云々言ってますが、私は築地市場より豊洲市場の方が、安全で清潔だと思っています。

築地市場では、コンクリートむき出しの上にマグロを置いてセリをしていましたが、新しい豊洲市場では、きちんと塗装された場所にマグロを置いて、セリを行います。

また、私自身の経験ですが、早朝の築地市場にはネズミが結構出ますから(そのブースを仕切る壁がないので、害虫が入ってきてしまう)、その意味からも衛生的になっていると思います。

大規模市場の役割は、終わりつつあるのかもしれない

豊洲市場を見学した後、私なりに考えるところがありました。それは、

「もう、モノを一ヵ所に集める時代は終わったのではないか?」

ということです。

「交易」(国と国、村と村といった1対1の取引)でモノを集め、「市場」(モノを1ヵ所に集めて、複数対複数の取引)で分配する、といった流れで、我々の経済は発展してきました。

「交易」はなくなりません。貴重な貴金属や、熱帯でしか取れない食料品もありますから。

ですが、「市場」はどうでしょうか?

築地市場ができてから80年が経ちました。
当時は物流が今ほど発達しておらず(そもそもトラック配送が今ほど発達しておらず貨物電車で汐留に商品が届いていたりしました)、パソコンやインターネットもありませんでした。
そうすると、お金がある大量消費地(東京)で、地方の特産品を売るためには、売る方・買う方が同じ場所に集まる必要があり、それが「築地市場」の役割でした。

ですが、物流・インターネットが発達したので、極端な話し、一個人が地方の特産品をインターネットで簡単に注文できてしまいます。

私は、モノを売る商売は、次の3要素が必要だと思っています。

  • 良い立地
    浅草や京都のお土産屋さんなんて、何もしなくても観光客が来るのでうらやましい
  • 独占的な商品
    有名なお酒を優先的に仕入れることができたらいいですね
  • ブランド力
    代々受け継いできたブランド名があると、消費者は安心して買うのでしょう

築地市場とその関係者は「良い立地(東京の中心であり銀座にも近い)」と、「独占的な商品(新鮮な魚が集まる)」で栄えてきました。

ですが、豊洲市場に移転することで、「良い立地」というメリットはなくなるのかもしれません。
また、物流・インターネットが発達しているので「独占的な商品」というメリットも薄れつつあるでしょう。

色々な評論家が言っていますが、世の中の流れがこれだけ速いと、一生安泰という職業はありません。
これからは「個の力」が試される時代になるでしょうが、私自身、この流れは行き過ぎだと思います。
※この流れを推し進めると、これからの日本は「アフリカのサバンナ」みたいに、弱肉強食社会になってしまいます。

「家業を継ぐ」

この、当たり前のことが、現代の日本では、とても難しくなってしまいました。
どうしたらよいのか、立ち止まって、少し考えてみませんか?

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