相続税の知識を身につけるには、どうすれば良いか?

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税理士の仕事には、色々な分野があります。
そのなかで「相続税を勉強したい」という要望が、近年、強くなってきたと感じています。
これから、相続税の実務を勉強するにはどうすれば良いか?
少し考えてみました。

※某税務セミナー(研修会)会場の入口にて。

税理士が今から相続税を勉強するためには?

税理士に限らず、どんな仕事でも、修行期間、仕事を覚える期間、というものはあります。

先日、ストレス解消?のために、1人で居酒屋に行きました。
※寂しい大人、という突っ込みはナシでお願いします(^^)

他にお客さんはいなく、カウンターに私一人、板さん一人、という状況でした。

※某居酒屋さんのカウンターにて。

この板さんに、
「このお刺身、美味しいですね~。どこのお店で修行されたんですか?」
とお聞きしたら、板さんが、
「築地にあるお寿司屋さんの**で16年ほど修行したんですよ」
とのことでした。

※たこのお刺身も、一仕事してあって、大変美味しく頂きました。

この板さんから、修業時代の色々な苦労話をお聞きしました。

  • ボク(板さん)が勤めた寿司屋さんは、厳しくて、みんな半年もたなかったこと
  • 先輩はある程度は教えてくれるが、基本、自分で見て盗むしかないこと

この板さんは、苦労して苦労して、これだけの技術を身につけられた訳です。

これは税理士も同じです。
どこかの本で、ある特定分野の技術を習得するためには、

「最低、1万時間のトレーニングが必要」

と、読んだ記憶があります。

これは税理士も同じです。
ある特定分野をマスターしようとしたら、各分野ごとに、最低、1万時間ずつ必要だと思います。
ちなみに、税理士の専門分野とは、次のようなものです。

  • 相続税(譲渡所得税、固定資産税を併せて「資産税」と呼ぶこともあります)
  • 組織再編税制(会社合併、分割等)
  • 国際税務(海外税制、移転価格税制等)

私の場合、お客様のなかで、大きな地主様がいらっしゃった関係で相続税を勉強することになりました。

最近、他の税理士先生から
「これから相続税を勉強するためには、どこから始めれば良いですか?」
というご質問を頂きます。

そこで、私が実際にたどって、悪戦苦闘した記録を書いてみたいと思います。
これから相続税の実務を勉強したい方は、参考にしてみてください。

まず書籍を読み込んでみる

まだ、1件も相続税の申告書を作ったことがない方もいるでしょう。
そのような方は、とりあえず、大きな本屋さんに行って、相続税の基本書を数冊購入してください。
また、国税庁が発行している「相続税の申告のしかた」という手引きも読むと良いでしょう。

これらには、相続税の基礎知識(相続人や基礎控除の解説)が書いてありますので、概要を抑えましょう。

実際の申告書を見てみる

現在、税理士事務所、税理士法人にお勤めの方は、その事務所で作成した過去の申告書を見せてもらうと良いでしょう。
※その際は、必ず、所長や上司の許可を得てください。その際は、「これから相続税を勉強したい」という旨を伝えるとよいでしょう。

相続税の申告書は、ただ作れば良いといった訳ではなく、多くの添付書類(戸籍謄本、各種説明書等)を添付することになっています。
それらを見て、どのように資料収集するのか、どのような順番で並べるのか、イメージするのです。

実際に申告書を作成してみる

ここまで来たら、後は、実際に申告書を作成してみると良いでしょう。

とりあえず、最初の1件を作成してみないと、何も始まりません。
※何事も、実際にやってみて、初めて「疑問(なぜ、こうなっているんだろう?)」や、「興味(こうしたら、どうなるんだろうか?)」がわいてきます。

ただ、ここで問題があります。

個人の税理士事務所の場合、相続税は難しいということで、所長の税理士先生が担当されることが多いと思います。
これには次のような理由があります。

  • 相続税は難しいし、ミスしたら金額が大きいので大変だ
  • 難しいことを教えても、どうせ辞めるからなぁ
  • 年に1件~2件くらいしかないから、自分(所長)でやった方が早いよ

ですが、そこを所長の税理士先生にお願いして、何とかやらせてもらうようにするのです。
「先生!残業代はいりません。私は真剣に勉強したいのです!」
とお願いしてみましょう。
※ちなみに、私の最初の1件は、無理矢理やらされたものでしたが・・・(^^)

また、大手の税理士事務所や、税理士法人ですと、完全分業制(法人税はこの人、相続税はこの人という感じ)になっていることが多いです。
その場合は、部署異動をお願いするか、退職して、相続税専門の事務所に勤めるしかないと思います。

いずれにしても、とりあえず、最初の1件目の相続税申告書を作れるよう、環境作りをお願いします。

実務セミナーに参加する

ここまで来たら、後は、相続税の申告実務・経験を重ねていけば良い、ということになりますが、相続税はとにかく、幅広い知識が必要になります。
例えば、こんな感じでしょうか。

  • 不動産鑑定士の基礎知識がないと分からないことがある
    正常価格、収益還元法、鑑定意見書の内容分析
  • 不動産関連の知識が必要となる
    開発道路、測量図作成の流れ、実際の売買の流れ
  • 役所で色々な事を調べる方法を知る必要がある
    開発登録簿、建築確認、道路調査、文化財埋蔵物の有無等
  • 相続に関連する法律の理解が必要となる
    民法、宅建業法、都市計画法、建築基準法、騒音に関連する法律等

これ以外にも、様々な知識があります。
相続税の申告実務を重ねますと、色々と分からない事が出てきます。
それを解決するのが「実務セミナー」です。

というのも、本を読んだだけでは、どうしても分からない事があります。
具体的にどこまでならセーフなのか、この知識とこの知識とは、どこで結びついているのか?、といった有機的なつながり、ファジーなことが、本だけだと分からないからです。

色々な税理士先生が、色々な場所で、相続税の実務セミナーを行っております。
とりあえず、有名な先生が開かれている実務セミナーは、全て出てみることをお薦めします。
そして、余裕がでてきたら、その先生の連続セミナー(年間を通して受講するもの)をお薦めします。

そして重要なのが「疑問に思ったことは必ず質問する」ことです。
※普通は、セミナー修了後に、先生が残って質問タイムを設けてくれますので、そこで質問するのです。

質問する際、私は以下のことを心掛けています。

  • 先生に最初に「お忙しいところ申し訳ありません。一点、ご指導頂けますか?」とお声がけする
  • 難しいことは、紙に概略図を書いてお持ちする(時間短縮のため)
  • 最後に「ご指導ありがとうございました」と、きちんとお辞儀する

先生も、いきなり、誰か知らないような人が質問してくるのです。
そして、質問者は、大抵、悩んだ末に質問してくるので、当然、難しい顔をしています。
ですが、柔らかい口調で、先生に、「ご指導頂けますか?」とご挨拶すれば、ご質問がスムースに進むと思います。

また、難しい事は、紙に概略図を書いて説明した方が良いでしょう。

(一部モザイクをかけていますが)私はこんな感じで、手書きメモを持参し、質問するようにしています。
というのも、私の後にも質問者さんは何人もいるかもしれませんし、先生もお忙しいので、質問時間を短縮する必要があるからです。

また、メモがある方が、その場で書き込んで、(場合によっては先生が追加で書いてくださる場合もあります)理解を深めることもできるので、お薦めです。

今まで、私なりに実践してきた方法を書いてみましたが、はっきり言って、勉強は大変です。
特に短期間で習得しようとすると、なおさらです。
※土日、休日を潰して、ひたすら読書、ひたすら実務セミナー参加をしなければなりません。

そのため、ご家庭がおありの税理士先生は、短期間での習得をお薦めしません。
ですが、まだ若く、奥さんも彼女もいない(彼女はいていいかもしれませんが(^^ ))
税理士先生は、必死に勉強されることをお薦めします。

私自身の経験ですが、結婚するまでは時間があったので、ひたすら仕事、ひたすら勉強、ひたすら実務セミナー参加を繰り返していました。
※それがあるから、ある程度の相続税の知識を身につけることができたのですが。

ですが、結婚してからは家庭があり、奥さんも家で待っているわけですから、休日にセミナー参加すると、奥さんも分かってくれないかもしれません。
※ここらへんは、その税理士先生と奥様との力関係にもよりますが(^_^)

最近は、税理士業界も余裕がなくなってきており、人を育てる時間がありません。
※この業界は、昔から「見て覚えろ!」という「丁稚奉公」的な世界ではありますが。

ですが、「きちんとした教育をしてくれない」と、事務所や所長を恨むのは間違いです。
自分の人生です。
自分のお金、自分の時間を使って、知識を得て、それで人生を開拓していくのです。

つらく、苦しいときもあるかもしれませんが、ぜひ、お互い、頑張って行きましょう!

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