こんにちは、税理士の石橋です。
先日、妻の実家(東北)に帰省する機会があり、久しぶりに関東圏を離れました。
私のお客様の中にも地方に賃貸物件を所有されている方がいらっしゃいますが、都心の不動産と地方の不動産とでは、さまざまな違いがあります。
今回は「地方の賃貸不動産の特徴」について、実際の相談や申告業務の経験から整理してみたいと思います。
※新幹線からの風景。
1. 入居率の低さと修繕費の負担
地方の賃貸アパートは、都心部に比べて入居率が低い傾向があります。
特に老朽化が進み、修繕や設備投資を怠ると入居率が50%を下回るケースも見られます。
修繕をしない → 入居率が下がる → 収入が減る → さらに修繕ができない
という「負のスパイラル」に陥りやすいのです。
実際、築20〜30年経過したアパートで、部屋数10部屋~20部屋程度の場合、年間100万〜200万円程度の修繕費(お風呂・キッチン・床の張り替えなど)が、毎年のように発生することも珍しくありません。
※特に、ユニットバスの入替に費用がかかります。
これを怠れば新しい入居者を確保できず、ますます収益が悪化してしまいます。
※地方の駅の風景。
2. 利回りの高さは「リスクの裏返し」
地方不動産は「利回りが高い」と言われますが、必ずしもそれが良い物件を意味するわけではありません。
優良資産(安全資産)ほど利回りは低く、リスク資産ほど利回りは高くなります。これは日本国債と新興国の国債を比較すれば一目瞭然です。
地方の賃貸物件は、都心に比べて「ハイリスク・ハイリターン」であることを理解した上で取得を検討すべきでしょう。
3. オーナーの目が届きにくい
管理会社に任せていても「何もしてくれない」と感じるオーナーは少なくありません。
結局のところ、不動産オーナー自身が定期的に現地を確認し、気になる点を管理会社に伝えることが効果的です。
例えば:
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郵便受けにチラシが溜まっている
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共用部分(廊下)が汚れている、荷物が置かれている
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ゴミ捨て場や自転車置き場が整理されていない
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騒音などの苦情が放置されている
こうした点は現地を見なければ分かりません。遠方の物件ほど「現場感覚」が失われやすいため注意が必要です。
※地方での風景。
4. 家賃の貸倒れリスクと現状回復費用
地方物件は家賃の貸倒れリスクが高い傾向があります。
家賃が高い物件(例:月20万円)は入居者の所得水準も高く、安定した勤務先に勤めている方が多いため、滞納リスクは低い傾向があります。
一方、家賃が低い物件ではその逆で、入居者の属性の影響(定職を持たないフリーターや、失業中の方々など)で、滞納やトラブルが発生しやすいのです。
最近は家賃保証会社の利用が一般的になっているため、オーナーの直接的な損失は減っています。
ただし、低家賃帯の入居者は室内を乱雑に扱う傾向があり、退去時に高額な現状回復費用が発生するケースもあります。
なお、家賃が家賃が貸し倒れた場合、現状回復費用もオーナーが負担することが多いものですが、このような属性の入居者の場合、部屋をものすごく汚している場合もあるですよね(室内が趣味のプラモデル塗装で汚れている、壁紙をなぜかめちゃくちゃ剥がしている、なぞの言葉が壁一面に書かれている等・・・)。
このような場合、オーナーの負担はさらに増えることになります。
5. サラリーマン投資家が陥りやすい落とし穴
「サラリーマンでも不動産投資を」という触れ込みで、数千万円台前半の地方アパートを購入する例も見られます。
しかし、数百キロも離れた遠方の物件を所有すると、現地の状況を把握できず、管理会社からの報告だけに頼らざるを得ません。
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近隣にどんな競合物件が建っているか
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入居者がどんな使い方をしているか
こうした情報が分からず、結果として不利な運営になるリスクがあります。
ですので、もし投資をするなら、ご自分の目が届く範囲での物件購入をした方が良いでしょう。
まとめ
地方の賃貸不動産は「ハイリスク・ハイリターン」の性質があります。
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修繕費を計画的に見込むこと
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管理会社に任せきりにせず、オーナー自身が現地確認をすること
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安易に購入せず、リスクを理解して判断すること
特に、(積極的に自分で取得したのではなく)相続などで取得された方は、まず現状を整理し、信頼できる管理会社と方針を立てることをおすすめします。
※相続対策で建てられた物件などは、銀行借入などもあり、売却が難しいケースもあり、オーナーが頭を悩ませるケースを多く見てきました。
場合によっては、管理会社の変更を検討することも検討すべきですが、地方ですと、都心と違って、そもそも管理会社の数が少なく、また、狭い地域で噂がたちやすいので、変更が難しい場合もあります。
少子化の影響でどんどん人口が減っています。
地方の物件を取得しようとする方、今現在保有している方、いずれも更なる注意が必要となるでしょう。