地主様・不動産オーナー様の顧問を務める際に気をつけること

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税理士が、地主様や不動産オーナー様の顧問を務める際は、単に税務申告だけをすればいいというものでありません。

不動産の現状確認のみならず、収支のバランス、さらには家族問題まで、様々な質問に答えることができるよう、準備しておく必要があります。

今回は、地主様・不動産オーナー様の顧問業務について、考えてみました。

※相続の土地評価の際に立ち寄った神社にて。

収入と支出のバランスに問題はないか

「借金がない相続が、一番良い相続」という言葉があります。

地主様や不動産オーナー様の場合、相続税を意識するあまり、過度の銀行借り入れをして、相続税対策をしている場合があります。

確かに、相続税は安くなるのかもしれませんが、やり過ぎると、家賃収入に対して、借入金返済が追いつかない場合があります。

そうすると、結局は所有している不動産を売却するなりして、銀行借り入れを返済しなければなりません。

「現預金・不動産・借入金」

以上の3つのバランスを、常に意識する必要があるのです。

継続的な関与をしていない場合(年1回の確定申告だけを受任している場合)は、お客様のキャッシュフロー(家賃収入と借入金返済のバランス)を確認するのが困難です。

そのような場合には、税理士に多少の費用を払ってでも、定期的なアドバイスを求めるべきと思われます。

修繕計画の予定・予算の確保

賃貸物件(主に居住用アパート)については、建物の躯体・構造にもよりますが、新築してから10年から20年経過後に、外壁塗装など、大規模な修繕をしなければならない場合があります。
※これらを怠ると、台風時に外壁から雨水が浸入し、室内の水漏れに繋がります。

室内に雨水が浸入すると、どのようなことになるでしょう。

横壁から入ったのか、屋上が原因なのか。雨水の侵入経路は、その特定が極めて困難です。

また、雨漏りの修繕時には室内に入室する必要があります。
当然、入居者の立会いのもとで行わなければいけませんから、修理時間が限られます。
また、入居者に多大な負担・迷惑をかけることになりますので、予防措置(外壁の防水工事など)が必要となるわけです。

そのため、お客様の賃貸物件が、築何年経過しているのか、前回の修繕工事からどれくらいの年数が経過しているのかを確認しておく必要があるでしょう。
どれぐらいの予算がかかるのか、その予算は確保できているのか、これらも合わせて確認しておくといいでしょう。

なお、修繕工事にあたっては複数の業者から見積もりをとるでしょうが、業者ごとに金額が本当にバラバラで、何が正しいのか、私にもなかなか判断できません。

ですから、 一旦信頼できる業者さんを見つけたのであれば、その業者さんに継続的にお願いするというスタンスが良いでしょう。

※以前購入した、修繕関係の書籍。書かれていることもまちまちですし、物件ごとに造りも違うので、完全な理解は難しいですね。

問題がある入居者・借地人の確認

複数の貸宅地(借主が建物を建てている土地)や、賃貸アパートを所有しているお客様については、不動産に問題が発生していないか、定期的に確認してあげるといいでしょう。

よくある問題として、家賃の未払いが挙げられますが、最近は 賃貸マンション入居の際に、保証会社をつけることがほとんどですから、家賃が回収できなくて困った、という問題は激減したと言えるでしょう。
※家賃の滞納が続いた場合は、保証会社が委託している弁護士が粛々と法的措置をとって、退去させます。

また、 貸宅地を多くお持ちのお客様については、借地権の買取りや、共同売却など、様々な選択肢が考えられます。
これらについては、借地人から地主さんに相談があったにも関わらず、大した問題として受け止めないで、税理士に相談されないままのこともあります。

そのため、税理士の方から定期的に「あの貸宅地は今どうなってますか」とお声がけするのがいいでしょう。

※以前は、建物にツタがびっしり覆っていて問題がある物件があったのですが、無事に解決して更地となりました。

固定資産税が適正に課税されているか

固定資産税にも注意が必要です。 

税理士が年1回の確定申告(不動産所得)だけ受けていると、「固定資産税の納税通知書」の細部を確認せず、納税額だけ確認して(経費に計上できる金額を確認して)終わり、ということも多いものです。

しかし、 住宅用地の特例が適用されていない、本当は2単位として評価すべきなのに1単位として評価されている、といったように固定資産税が高く課税されている事例が、まれに見受けられます。

顧問業務を受けている場合は、これらについてもチェックが必要となるでしょう。

相続税の金額はいくらになるか

地主様や不動産オーナー様の顧問業務で必ず必要となるのが相続税の試算です。

特に、不動産をお持ちの方がご高齢の場合(いつ相続が起きてもおかしくない場合)は、相続税がいくらになるのか、どのように支払うのかを考えておかなければいけません。

相続税の試算だけであれば、ある程度経験のある税理士なら誰でもできると思います。
ただ、その相続税はどのように払うのか(売却して払うのか、延納するのか、物納するのか)については、 ある程度の経験が求められるでしょう。
※相続税を支払った後に残る不動産について、後継者がきちんと管理できるのか、そこまで考えて判断する必要があるでしょう。

家族の皆様の暮らしぶりについての確認

私が開業して約11年が経ちますが、その間、色々なご家族を見てきました。

基本的に、私のお客様は家族円満な方が多いのですが、まれに、あまり仲がよろしくないご家族様もいらっしゃいます。

また、ご自身がご病気である、ご家族でご病気の方がいる、そんなお客様もいらっしゃいます。

収支のバランスや、相続税の試算など、税理士はどうしても数字だけで判断しようとします。
しかしながら、お客様の家族関係、家族状況を考えて、色々な対策やアドバイスをする必要があるのです。

私自身、ご家族のご病気に気がついて、障害年金の申請アドバイス(社労士先生へ一緒に同行したことを含む)をしたことも数件あります。

また、ご子息が、今後の不動産管理に不安を抱えているようであれば、積極的に売却を進めた事例もあります。

単にお金や税金のことだけではなく、お客様とそのご家族のことまで考え、アドバイスする。顧問税理士には、その姿勢が求められるでしょう。

※お客様への道中にて撮影。仲良い家族が一番ですよね。

ひとりの税理士が継続的に見なければならない

以上の事を実践するためには、不動産に詳しく、かつ、ある程度の経験がある税理士が、継続的にそのお客様の顧問を続ける必要があるでしょう。

ただ、税理士の性格もあります。
単発の大きい仕事(相続税申告)だけをやって、お客様との継続的な関係を望まない税理士もいるでしょう。
これに対し、長いお付き合いを望む税理士もいるでしょう。
これは税理士の性格にもよります。

地主様・不動産オーナー様といった資産家の方々については、我々一般人が、及びもつかない悩みがあるものです。
※私も色々経験しましたが、守秘義務の関係でここでは伏せたいと思います。

税理士の方も、真剣に受け止めすぎてしまうと、税理士自身がうつ病などの精神的疾患に罹ってしまう可能性があります。
※この辺り、真面目すぎる税理士先生は要注意なんですが。

ただ、真剣に受け止めないと良い答えは出せません。
この辺りのさじ加減が難しいんですね。

私が目指している税理士像とは、

「家族以上に信頼できる、相談できる税理士」

です。

ご家族の中には、ご病気の方もいるでしょう。
資産を管理しきれない(重荷となってしまう)方もいるでしょう。

そのような方たちのために、できるだけのお手伝いをしていきたい。
そのためには、 

「このお客様のために、頑張ってお手伝いしたい」

という気持ちがもてるお客様でないと、税理士の方も、お手伝いは難しいといえるでしょう。

税理士先生のなかには

  • とにかくお客様を増やしたい
  • 顧問先が増えれば内容は問わない
  • 増えてきたら若い職員に丸投げすればいいんだ

とお考えの先生もいらっしゃるでしょう。

ただ、地主様・不動産オーナー様の顧問業務については、色々な責任が生じますし、ご家族の状況も考えて差し上げる必要がありますから、 安易な気持ちでは受けてはいけない。
私はそう考えます。

今後もお客様のために、頑張りたいと思います。

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