遺族年金・障害年金と税理士との接点

一定規模以上の資産があるお客様については、毎年税務申告があるため税理士に依頼していることも多いでしょう。

ただ税理士の方も、漫然と税務だけをしていてはダメな時代になりつつあります。例えば年金について最低限の知識や理解が必要です。それも実務的な。

今回は、年金——それも遺族年金や障害年金について、税理士が理解しておくべきことを考えてみたいと思います。

※電車にバイバイする長男


社会保険の加入要件や節税について詳しい税理士は一定数いる

税理士の主な仕事は企業の税務顧問ですから、税務顧問に付随する知識は豊富です。例えば役員や従業員の社会保険の加入要件などについては、詳しく知っている税理士も多いでしょう。
ただ、遺族年金や障害年金についてきちんと理解している税理士が多いかと言われれば、正直、疑問符がつきます。というのも、私自身が十数年前は正しく理解していなかったからです。


遺族年金で税理士が知っておきたいこと

これからの時代、少子高齢化が続き、90歳・100歳まで生きる方もいらっしゃるでしょう。ただ、いまだに治らない病気もあるでしょう。

気をつけたいパターンとして、夫が厚生年金に加入している場合(一般企業や同族法人で社会保険に加入している場合)で、それなりにお給料をもらっているケースです。

この状態で、例えばご主人が、若くして完治が見込めない病気(例えばガンなど)になっている場合、夫が亡くなる前に、妻の遺族年金の支給要件について確認しておく必要があります。

具体的な支給要件は年金事務所や社会保険労務士に相談しておく必要があるのですが、税理士が確認しておきたい点としては妻の収入(所得)要件です。

例えば、夫と妻両方とも同族法人から高額の給与をもらっているという場合があるでしょう。また、妻に以前から他の収入があるかもしれません。
この場合、妻の収入が一定額を超えていると遺族年金が支給されないことになります。

ですから、夫が重い病気であることを察知した場合、税理士としては妻の給与金額や他の収入の有無についても気を配るべきでしょう。


障害年金で税理士が知っておきたいこと

障害年金には大きく分けて「身体」と「精神」があります。

身体は、例えば——言葉が大変悪いのですが——事故で両手を失ってしまった、両目が見えなくなってしまったというものです。このような場合、障害年金の申請書類に添付する医師の診断書で役所側も確認できますから、きちんと障害年金を受け取ることができると思います。また、専門性がもの凄く高いというわけではないので、一般の社会保険労務士の先生でも、申請業務を手伝って頂けることも多いと思います。

ただ、問題は精神の方になると思います。精神とは、例えばうつ病やパニック障害といったものになりますが、障害年金の申請は書面での審査になります(面接とかありません)。ですから大事なのは、「障害年金に詳しい社会保険労務士に依頼する」ということになります。

障害年金に詳しい社会保険労務士に依頼すると、過去の受診記録の調べ方や揃え方医師の診断書をきちんと書いてもらうポイントいつまで障害年金の受給を遡れるのか、など様々なアドバイスを受けることができます。これは別にズルをしようというわけではありません。書面での審査になりますから、こちらの事情を伝えないと、受給要件は満たしていても却下されてしまうのです。

以前、私の知り合いの方でも「自分で申請してみる」ということで、自分で揃えて出されたところ却下されたということでした。この方が障害年金に詳しい社会保険労務士に依頼したら絶対に支給されたかと言われたら、私は専門家ではないので分かりませんが、少なくとも受給できる確率は自分でやるよりは上がったでしょう。

ただ、普通の税理士は「障害年金に詳しい社会保険労務士が誰か」を知りません。また、障害年金に詳しい社会保険労務士の数は極めて少ないと感じています。

私の場合、普段お付き合いしている社会保険労務士の先生に「障害年金に本当に詳しい先生を教えてください」ということでご紹介をいただいたこともありました。

障害年金、特に精神の方は、一般の方はそんなものがもらえるのかということ自体を知らないことがほとんどです。さらに最長5年分遡ってもらうことができる可能性がありますので、手続きが遅れても諦めないことです。実際、私もお客様の方で社会保険労務士の先生をご紹介して、5年分遡って受給できたこともありました。

税理士は、お客様だけでなく、そのご家族の体調にも問題がないのか、気を配る必要があるでしょう。


税理士はどうしても、企業の社会保険、つまり支払い側について目が行きがちですが、高齢化の時代に突入し、これからはどうやってもらうか、つまり受給側の視点に立って考える必要があります。そのためには日々の勉強は欠かせませんし、社会保険労務士の先生と普段からお付き合いして勉強・情報収集をしておく必要があります。
税金だけでもダメ、不動産の知識だけでもダメ。これからの税理士には、様々な知識が求められると思います。

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