このたび、初の新刊(単著)が正式発売されました。
開業して10年たちますが、開業前は、自分が書籍を出すなんて想像もしませんでした。
ですが数年前から「自分が経験したことを一冊の本にまとめてみたい」と思うようになり、それが実現しました。
書籍の「おわりに」 にも書いたのですが、執筆を支えてくれた妻や両親に感謝です。
※丸善(丸の内本店)にて。
出版までの経緯
出版までの経緯はこちらの記事にも書きました。
先々週、担当編集者の方が私の事務所にお見えになり、こうおっしゃいました。
「石橋先生~。今だから正直に申し上げますけど、やっぱりこの本、初の著書にしてはボリュームが多すぎました。ですからこちらも相当大変でした・・・」
この本の企画が正式に決まったのが、2019年11月でした。
ですが、正直に言うと、確定申告やら年末調整やら、専門誌の原稿やらで、 真剣に書き始めたのは2020年4月頃からでした。
そして、2020年の年末頃に、編集者様から、
「今どれぐらいの進捗状況なんでしょうか?。途中でも構わないので、現在の原稿を送ってください」
という確認のメールが入りました。
私は「今、17万字ぐらいです。最終的には20万字以上になると思います。」と返答し、原稿を送信しました。
その時の編集者様の心境は、
「え!そんなに字数が多くなるの?」
というものだったそうです。
このたび出版した「日本法令」様では、出版が決まると 「単行本ご執筆のお願い」なる書面を渡され、そこから正式に執筆することになります。
その中に<執筆分量>が記載されており、<約12万字から約14万字>との指定がありました。
編集者様に「何万字ぐらいまでだったら大丈夫なんですか?オーバーしても良いのでしょうか?」とお聞きしたところ、多い分には大丈夫だということでした。そして、
「だいたい、10万字あれば、一冊の本が出来上がります。あとは、文字数が多い場合はページ数を増やしてフォントを小さくし、逆に、文字数が少ない場合は、ページ数を少なくして文字フォントを大きくします。」
ということでした。
「多い分には大丈夫」と言っても、文字数が多いと完成までに時間がかかりますし、校閲も大変です。
今回の書籍は、約25万字くらいあります。当初の指定文字数よりは大幅にオーバーしてしまったので、ちょっと反省しております。
ところで、A4のワード原稿は、1ページ約1,000文字くらいですから、25万字は、単純計算で約250ページということになります。これに図表が変わりますから実際は300ページ近くになるでしょう。
2021年5月頃から、編集者様と何度も何度もやり取りし、厳しいご指導を頂いて、なんとか完成にこぎつけました。
今回の反省ですが、文字数が多すぎると校閲(最終チェック)が大変!ということがわかりました。
もし次回作の機会をいただけるのであれば、もう少し、少ない文字数の方がいいなと思いました(^^ )
書籍の正式な発売日とは?
本が完成すると発売日が気になります。
編集者様に「この本の発売日はいつですか?」とお聞きすると、
「だいたい、10月末から11月上旬頃になります」
とのこと。
この「だいたい」という意味についてお聞きすると、 出版業界の独特な商慣習が見えてきます。
出版業界には「取次(とりつぎ)」なる制度があります。
出版社→取次(問屋)→書店
取次とは、いわば問屋のようなものです。
日本には大手の取次が2社あり、事実上この2社が独占状態で、本の流通を担っています。
というのも、日本全国津々浦々、街の小さな書店にまで、もれなく本を届けるためには、ある程度、流通網を集約させる必要があるのです。
取次は指定された日に、各書店に注文された本を届けるわけですが、届くタイミングは微妙に違います。
都市部であれば早く届くでしょうし、地方であれば数日遅れるでしょう。
そのため書籍の場合、その本屋に届いた日が発売日となるわけです。
※雑誌の場合は、書籍と異なり、発売日が厳格に決められています。ちなみに、マンガの単行本は雑誌扱いになるそうです。
ですが、例外的に、発売からベストセラーが分かっているような本(例えばハリーポッターのような本)については、早めに書店に送り、発売日を全国で統一するといったことが行われます。
いつ発売になるのか(書店に届くのか)気になりましたので、 アプリを使って確認してみました。
これは、「honto with」というアプリで、全国の「丸善」「ジュンク堂」の店頭在庫を調べることができるものです。
編集者様からは
「10月29日以降、各書店に届いた日が発売日となります」
とのアナウンスを受けていました。
私の事務所は茅場町にありますので、最寄りの書店は丸善(日本橋店)か、丸善(丸の内本店)になります。
「都心の方が早く到着するだろう」と思っていたのですが、 今回の場合は逆でした。なぜか立川や、新潟、名古屋といった、 東京から離れている店舗の方が先に入荷したのです。
おそらくですが、大型書店の場合、金曜日に書店に届いていても、実際の店に並べる作業は週明けの月曜日に行うのが普通でしょう。
ですが、比較的小規模な書店の場合は、届いてすぐに棚に並べられるのかもしれません。
何気なく買っている本ですが、いろいろと勉強になりました。
※八重洲ブックセンターにて、娘と撮影。
税務の論点は出尽くしているが、まだ切り口はある
編集者様からは「次の企画を考えておいてくださいね」と言われましたが、良いアイデアって、すぐに浮かびませんよね。
税務の論点は出尽くしています。
また、難しい論点は、権威ある国税OBの先生が解説なさっています。
そのため、我々フツ~の税理士が本の企画を考える時は、一捻り(ひとひねり)しなければなりません。
今回の私の書籍は
- 地主・不動産オーナー
- 相続開始後
- 手続を多めに記載(税務だけではない)
という3つの要素で出来上がっています。
相続開始前(いわゆる相続対策)の書籍は、巷にあふれていますし、税理士が相続のことを書くといえば、相続税だけになるでしょう。
そのため、 私も一生懸命、企画を考えました。
その際にポイントとなるのが、自分の実務経験です。
これは書籍の「おわりに」にも書いたのですが、私は、地主・不動産オーナーの方々から、いっぱい怒られ多くのご指導を頂きました(^^ )
そして、その都度、税務以外の、多くの周辺手続きや法律を勉強することとなりました。
ただ、これらについては、税理士向けの書籍には書いていませんでしたので、不動産業界の本や、弁護士向けの本を読み、その都度、一生懸命勉強しました。
その経験・知識をまとめれば、他の税理士先生が書いた本と差別化が図れるのではないか。
そう考え、企画案を提出しました。
ですから、これから書籍に企画を考えようという方は、ご自身の実務経験を振り返り、その中から企画を出していくのがいいでしょう。
出版は、ひとつの区切りになります。
私の場合、相続関係の知識について振り返る、良い機会となりました。
しかし、不思議なもので、完成後のものを読むと、あれだけチェックしたのに「この部分の説明が足りないのではないか?」「この説明では誤解を生むのではいか?」という点がでてきました。
編集者様が「実際の本になると、また印象が違うものですよ」と、おっしゃっていたのは、このことかと思いました。これは次回作の課題としたいと思います。
なお、今後の展望ですが、税理士実務に終わりはありませんから、他の分野についても勉強し、また別のテーマで本が執筆できればと考えています。
最後に、出版の機会を与えてくださった編集者様に御礼申し上げます。
本当にありがとうございました!