答えのない問題の書き方(税務QA:2022年10月号に掲載されました)

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不定期で、税務QA(税務研究会が発行している月刊誌)に執筆しています。

このたび、掲載したテーマが「居住用高層マンションを贈与した場合の評価額」です。

いわゆる、タワーマンション(タワマン)を贈与した場合に、どのように評価すれば良いのか、また、その注意点について解説しました。

このテーマは、相続実務についていらっしゃる方であれば分かるのですが、いわゆる「答えのない問題」というやつでして、書くのに難儀しました。

今回は、答えのない問題を、どう書いたら良いのかについて考えてみました。

※税務QAに掲載された記事。著作権の関係でモザイクをかけています。

答えのない問題とは何か?

どの仕事でもそうですが、調べても、どの本にも書いていない実務上の問題というのがあります。

税務で言いますと、次のようなものになるでしょうか。

  • どこまで経費になるのか・・・永遠のテーマですね
  • 組織再編税制でどこまでが適格となるのか・・・専門家の先生でないと分かりません
  • タワーマンション購入後にすぐ相続を迎えた場合は?・・・令和4年の最高裁判決で否認されています

一番最後のテーマについては、バブル経済期からある問題で、タワーマンションのように、時価と相続税評価額との間に、著しい乖離がある財産については、税務署を目を光らせています。

特に、高額な(解離の額が数億円以上のもの)については、現在も納税者と税務署とで、たびたび争いとなっているようです。
※私も、風の噂で、現在進行中の案件の話しを聞くことがあります(^^ )

相続実務に詳しい先生方であれば分かると思うのですが、相続発生の数年前に、被相続人が賃貸アパート1棟や、タワーマンションの1室を購入し、そのまま相続を迎えると、時価と相続税評価額との間に、相当な乖離が生まれます。

この乖離ですが、

  • 〇〇円以下であれば大丈夫
  • 購入から相続開始まで〇年が経過していれば大丈夫

といった、明確な基準がありません。

これは贈与も同じことで、乖離が大きい資産について、親が購入して、その直後に子供に贈与した場合、時価と相続税評価額のどちらで課税されるのか?といった疑問があります。
こちらにも、明確な答えはありません。

執筆テーマのお題ですが、いつも、編集長からメールや電話できます。
今回も向こうから

「こんなテーマで書いてもらえますか?」

と言われ、二つ返事でOKしてしまいました(^^ )

ですが、明確な答えや基準があるわけではありません。
その場合、どうやって執筆すれば良いのでしょうか?

※友人の税理士と、新宿に飲みに行ってきました。

「ヨコ(横)」と「タテ(縦)」を意識して執筆する

経済学で有名な先生が、論文や原稿の書き方について、こう語っていました。

「原稿を書くときは、ヨコ(横)とタテ(縦)を意識するように。ヨコとは他国や自国での、他の制度との比較を。タテとは過去・未来といった時間の流れを意味します。タテとヨコを意識すれば、原稿はいくらでも執筆できます。ただ、調べるのに時間がかかるんですがね~」

みたいなことを語っていらっしゃいました。

おっしゃるとおり、タテとヨコを意識すれば、答えのない問題でも、ある程度、実務の指針を示すような原稿が書けるんだと思います。

そのなかでも、今回はタテ(過去の取扱いの変遷。具体的には判例や採決、さらには国税の内部研修資料など)を、過去30年分くらい調べて書いてみました。
そのため、いつもの原稿の倍くらい、時間がかかってしまいました。

書いてみて、どう評価されるか心配でしたが、編集長からメールが来て、

「精読しましたが、実にうまく解説されていますね。ちょっと感服しちゃいまして。」

なるメールを頂き、ちょっと嬉しかったです(^^ )

※新宿の花園神社にて。

録音していないセミナーであれば、きわどいことも言えるでしょう。
ですが、原稿は不特定多数の方がご覧になりますから、断言したり、グレーゾーンギリギリといったことは書けません。

そんな制約があるなかでも、できるだけのことを伝えたい。
そんな気持ちで、毎回執筆しています。

今後も、少しずつですが、執筆を続けたいと思います。

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