弁護士、税理士、司法書士、いずれも開業していると、色々なリスクがあります。
リスクを考えていると開業できませんし、リスクリスクと自分の保身?ばかり考えていると、お客様に良いサービスを提供することができません。
開業税理士には、どのようなリスクがあるのか?
そのリスクと、お客様との関係について、どう向き合えばいいのか?
私なりに考えてみました。
※東京タワーを真下から撮影。
開業税理士のリスク一覧
私なりに、開業税理士のリスクと、その対処法を考えてみました。
お客様からクレームを言われないか?
お客様から
「この書類、どうなってんの?これじゃ、良く分からないよ!」
と、お叱りを受けることがあります。
※以前は、私もよく受けていました。
税理士は基本、真面目ですから、ある程度若くて、身なりもきちんとしている方であれば、よほどひどい書類を作ることはないと思います。
では、(きちんとした書類を作っているのに)なぜ、そのようなお叱りを受けるのでしょうか?
この原因の多くは、
「お客様に選んで頂けていない」
ということにあると思います。
税理士は、お客様から、
- 人格、人柄、優しさ
- 家族構成
- 知識
- 事務所の立地
- フットワーク
- 節税への考え方
この全てを見て、選んで頂く必要があります。
他のお客様からの紹介や、他の税理士事務所のお客様を引き継ぐと、このように、「お客様と税理士とのミスマッチ」が起きることがあります。
冒頭の問題「お客様からクレームを言われないようにする」の究極の解決法は、
「自分(税理士)の全てを理解してくださり、その姿勢を応援してくださる方だけをお客様にする」
ということです。
そのためには、安易にお引き受けするのではなく、税理士の方もちょっと考えて、
- 自分(税理士)は、そのお客様のために一生懸命頑張れるのか?
- お客様が歩んできた道のり(社歴、創業時のご苦労)を想像してみる
- お客様とご家族様との関係性を考える
- 報酬が適正かを考える
以上を総合的に考えて、お引き受けするか、しないかを考える必要があります。
クレームの根底には、お客様からの不信感があるかもしれません。
そして、その不信感の根底には、上記の「考え方のミスマッチ」があると思います。
自分(税理士)の姿勢に共感してくださる、応援してくださるお客様であれば、税理士も一生懸命頑張りますので、良い循環が生まれると思います。
仕事で失敗しないか?
税理士の仕事は、神経を使います。
それは、仕事の結果が常に数字に表れるからです。
知り合いの弁護士先生(この方は大手法律事務所の合併部門に従事)に、以前、このように言われたことがあります。
「石橋先生の仕事って大変ですよね~。結果が数字で出てしまいますから。ミスしたら、すぐに分かっちゃうでしょ?。ボクの事務所にもタックス(税金)部門があって、そこで頑張っている同僚(弁護士)もいますけど、ボクには合わないですよね。数字で神経をすり減らしてしまいますから~」
これは、この弁護士先生だけでなく、他の弁護士先生からも言われたことがあります。
※弁護士先生は、多少失敗しても、何が失敗なのか、分かりにくいところがあるそうです。***とからしいです。(**の部分は秘密です)
確かに、そのとおりです(>_<)
税理士の仕事は、数字で判断されますから、ミスをしたら、すぐに分かってしまうでしょう。
ですから、慎重に実務(仕事)をする必要があります。
この対処法としては、次が挙げられるでしょう。
大きな判断・決断のときは「書面」で説明する
数十年前からお付き合いが続いているお客様(顧問先様)ですと、悪く言うと「なあなあ」の関係が続いていて、全ての説明を口頭だけで済ませることも多いと思います。
何もなければ良いのですが、お客様も大きな決断をされるときがあります。
例えばですが、
- 会社で高額な不動産を購入する場合
- 高額な社長退職金を支給する場合
- 相続税を試算したときの各種前提条件
といったときは、「書面」で説明するようにした方が良いと思います。
というのも、人間は忘れやすい生き物ですから、きちんと口頭で説明しても、お客様はお忘れになってしまうかもしれません。
また、現在の社長様からご子息様に代替わりした際、ご子息様が、「何で父にきちんと説明してくれなかったんですか?」と、おっしゃるかもしれません。
民法で言えば「委任」や「善管注意義務」といったことになるのでしょうが、そんなに難しく考える必要はありません。
書面で説明しなければ、
- 具体的な節税額、取引が失敗したときの損害額が分からない
- どのような場合に何が起きるのかが分からない
といったことが、お客様には分かりません。
ですので、重要な説明のときには、書面で説明するようにしてください。
なお、書面をお渡しするだけではダメです。
よく、大手税理士法人が、ものすごーく立派な説明書、提案書を作成しますが、それらの説明書を渡すだけではダメで、お客様にじっくりお話しして、ご納得頂くことが、一番大切です。
※書面だけ作って渡すだけでは「仏作って魂入れず」となります。気をつけましょう。
また、場合によっては、(相続税以外のお仕事でも)「確認書」を頂く事も必要になるかもしれません。
※確認書については、次の記事を参考にしてみてください。
契約書を作る
契約書を作ることに、抵抗を感じることがあります。
※特に、昔からのお客様ですと、社長様から「私を信頼してないのか!」と言われないか、昔はヒヤヒヤしたものです。
ですが、そうではありません。契約書を作る意味としては、
- 業務の範囲
・・・どこまでお手伝いするのか? - 訪問の頻度、場所
・・・どれくらいの頻度で訪問するのか、打ち合わせ場所はどこか? - 顧問料の算定根拠
・・・難しい業務、追加業務の場合の考え方
ということが挙げられます。
特に、業務の範囲は大切だと思います。
年に1回の決算だけの契約なのか、それとも継続的な顧問契約なのか、それによって、責任も違います。
以前、弁護士先生からこう言われたことがあります
「石橋先生。顧問契約というのは、とても重いものです。なぜなら、善管注意義務が適用されるからです。善管注意義務とは、わかりやすく言うと、上見て下見て左見て右見て、あらゆるケースを想定して考える、ということですからね」
契約書は、色々と注意することがありますが、心配であれば、お知り合いの弁護士先生に相談料をお支払いしてチェックして頂くのも良いでしょう。
税理士の保険に入る
税理士向けの損害賠償保険があります。
こちらは、税理士が税金上の問題で失敗したとき、保険会社がカバーしてくれるというものです。
※必ずカバー(保障)してくれる訳ではありません。そこがこの保険の悲しいところですが・・・。
この税理士向けの損害賠償保険ですが、他の士業(弁護士、司法書士、行政書士等)に比べて、飛び抜けて保険料が高いんです。
これは、税理士の業務では、他の士業に比べて、事故率(ミス率)が高いからなんですね。
良くあるのが「消費税のミス」だそうです。
気をつけたいものです。
※以前、ある案件に関与したとき、前の高齢の税理士先生が、法人名で「消費税簡易課税選択届出書」を出すところ、個人名で提出してしまい、ミスしたという、笑えないものもあります。
ですから、税理士保険には必ず加入しましょう。
そして、加入額はなるべく高めに設定しましょう。
※私は心配性なので、最高額のものに加入しています(^_^;)
お客様をどうやって増やすのか?
「お客様を増やす」という言葉は正しくありません。
正しくは「お客様に選んで頂く税理士になる!」ということです。
自分が真面目であれば、真面目なお客様が増えるでしょう。
明るい性格であれば、明るい性格のお客様が。
優しい性格であれば、優しいお客様が。
イケイケドンドンな性格であれば、ヤリヤリ?なお客様が。
人間、同じ性格の人と付き合いたいですから、これは当然のことです。
ですが、お客様は、その税理士(あなた)のことを知りません。
ですから、
- ホームページを作る
- セミナーで話す
- 相談会で相談になる
といったことで、自分の性格、背景を知ってもらう必要があります。
特に、ホームページは重要です。
ホームページで、自分の考え方、背景を、(見込みの)お客様に知って頂く必要があるんです。
※ホームページについては、下記の記事を参考にしてみてください。
これらを実行して、「少しずつ」お客様を増やすことをオススメします。
※本当に自分を選んでくださるお客様からは、頻繁に問い合わせはありませんので。ですが、その姿勢が大切です。
※ペコちゃんのお菓子。
心配してばかりでは開業できない
色々と心配事(=開業時のリスク)を書いてきました。
私は平成23年に開業したので、開業してから7年が経過しました。
開業して、色々なことがありました・・・。
※石原裕次郎がブラインドの隙間から、夕日を眺めているイメージでお願いします(^^)
- 無茶苦茶なお客様(どう無茶苦茶かは、また今度ご説明します・・・)
- 脱税志向の強いお客様
- 課税庁担当者様の意見がコロコロ変わったこと
- 身の丈に合っていない大きな仕事を受けたこと
その都度、悩みに悩んで、リスクと向き合ってきたと思います。
そして、7年前の自分と比較して、相当、成長したと思います。
※自分で言うのも恥ずかしいんですが(^_^)
以前、次のような本を読んだことがありました。
その本に、こんなことが書いてありました。
※ちょっと表現が違うかもしれませんが。
著者の日下(くさか)先生が銀行に勤務されているとき、夜の街中で、部下数人に対して、こう言ったそうです。
「今から宴会だが、宴会の場所が渋谷だから、今からみんな、ガールハント(=要はナンパのことです)してこい」
部下に度胸(=商品を売るための営業力)を付けさせるために、こう言ったそうです。
ですが、部下のほとんどは、ナンパすることはできず、もじもじとして終わったそうです。
ここでの、日下先生の評釈が面白い。
「これが上流の子供だったら面白いと思って、ガールハントに行くだろう、下流の子供も行くだろう。失うモノが何もないからである。中流はリスクを取らない。上流と下流はリスクと取る。そもそも昔のヨーロッパは上と下だけだったのである」
私も、良くも悪くも「中流」です。
リスクをできるだけ取りたくない、という人生でした。
※今もそうなんですが(‘-‘*)
ですが、日下先生もおっしゃるとおり、何か行動を起こすのであれば、リスクはつきものです。
そして、独立は、早いほうが良いと思います。
※結婚してお子さんがいれば、まずそちらを守る必要があります。そうしたら、独立を躊躇してしまうかもしれません。
開業税理士とリスクについて、考えてみました。
独立を考えている方の参考になれば幸いです!