資産家の資産構成・家族構成は、税理士が定期的に確認すべき

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「資産家の人は、定期的に資産構成をチェックしましょう!」

なんてフレーズを聞くことがあります。

ですが、

  • 誰がチェックするのか?
  • 資産構成だけチェックすれば良いのか?
  • いつ、チェックするのか?

という疑問がわきます。

税理士が資産家のお客様にできることを、少し考えてみました。

※お中元で頂いたそうめん。ありがとうございました!

いくら以上を「資産家」というのか?

いくら以上の資産を持っている方を「資産家」というのでしょうか?

明確な定義はありませんが、一般的には、

「金融資産+不動産=1億円以上」

というようになるんだと思います。

ですが、1億円くらい(くらいというのは大変失礼なのですが・・・)ですと、税理士が色々なアドバイスを差し上げても、相続税が劇的に安くなったりすることはないと思います。

ですので、税理士的に言えば、

「金融資産+不動産=2億円以上」

ということで、2億円以上が、税理士が考える資産家になるのかな、と個人的には思っています。

資産構成をチェックする時のポイント

資産構成をチェックする場合、どこを見ればよいのか、どのように見ればよいのか、迷うこともあるでしょう。
私なりに実践しているのは、次のような方法です。

確定申告の時

所得税の確定申告をする際は、お客様から色々な資料をお預かりします。

  • 家賃収入、地代収入がある場合、その集計資料
  • 株式の売却益がある方は、保有銘柄の資料
  • 財産を3億円以上お持ちの方は、財産債務調書の資料
  • 国外に5,000万円以上の資産をお持ちの方は、国外財産調書の資料

それぞれの資料からは、色々な「気づき」があるものです。

家賃収入や地代収入の集計資料

賃貸不動産をお持ちのお客様は、確定申告のときに、受取家賃・受取地代の集計資料を持ってきてくださります。

この資料を見れば、色々なことに気づきます。

  • 入居者の入れ替わりが激しい、外国人・生活保護者の入居者が増えている場合
    ・・・近くに競争物件ができた?
    ・・・物件が古い場合は、売却も検討?
  • 家賃・地代が長期間空欄(無収入)の場合
    ・・・供託されている(争っている)物件はないか?
  • 出口戦略を考えているか?
    ・・・そもそも売却できるか、売却時の税金は?

不動産所得の確定申告は、はっきりいって、そんなに難易度が高くないので、どの税理士先生に依頼しても、結果は(ほとんど)変わりません。
※ただし、新築物件の場合は、細かく減価償却すると、開始数年度の節税につながる場合があります。

ですから「とりあえず、安い税理士に頼んどけばいいんや~」ということで、そのようにされたり、もしくは、ご自分で確定申告されている方もいるでしょう。

ですが、不動産を一定額以上(具体的には2億円程度以上から)持っている方は、きちんとした税理士に、きちんとした報酬を支払って依頼することをお薦めします。

以前、あるご相談を受けたことがあります。
※守秘義務の関係で、少し事実を変えています。

「今、お願いしている税理士先生が高齢なので、若くて、不動産に詳しい税理士を探しています」

ということで、私にご相談が来ました。

この方ですが、先祖代々の地主で、不動産管理もご自分で、確定申告もご自分で集計して、その資料を税理士に渡していました。
※今までの税理士先生は、要は「集計屋・税金計算屋」的な位置づけだったんだと思います。

そのため、今までの税理士先生は激安でお受けしていたのですが、私の方針は、

「お客様をお守りする」

ということです。

その方は、全てご自分でやってきたという自負があり、だいたいのことは分かっていると、ご自分では思われていました。
ですが、私から見ると、

  • 広大地を知らない
    ・・・原則500㎡以上の土地は相続税がかなり安くなるかもしれない制度
    ※平成30年改正で廃止となってしまいましたが。
  • 土地の評価単位を知らない
    ・・・貸し方、自分での利用の仕方を工夫することで、相続税が安くなるかもしれない
  • 小規模宅地の考え方を間違っている
    ・・・住んでいる土地、貸している土地は相続税が安くなる制度があるが、難しい制度なので、間違って解釈していた

という問題がありました。

これらを見過ごして、今までの税理士先生のように「激安」でお受けすることは、お客様、税理士の双方にとってよくありません。

例えば、税理士が年間10万円~50万円程度、余分に報酬を頂戴し、その結果、10年後の相続税が数千万円以上安くなれば、当然、その方がよいでしょう?

ですので、税理士の方も、年1回の確定申告だからといって手を抜かずに、持てる知識を総動員して、心配して差し上げる必要があります。

株式の保有銘柄の確認

上場株式をお持ちの方からは、確定申告のときに「特定口座の年間取引報告書」をお預かりすることがあります。

このときに、その株式を預けている証券会社から、

「保有株式一覧のご案内」

といった書類もお預かりすることがあります。
※書類の名前は、各証券会社ごとに違いますが。

ここには、そのお客様が保有している株式・証券投資信託・外国債等の一覧が記載されています。

お客様のなかには、証券会社の担当者の言いなり?で、投資をされている方もいます。

一昔前、証券会社から電話がかかってきて、

「**会社の株式は、必ず(このあたりの表現は微妙ですが(^^ ))上がりますから、今、買いましょう!」

といことで、担当者の意見におされて、買い付けをしてしまうお客様が、結構いらっしゃったそうです。

私は、こんな仕組み?は一昔前に終わったと思っていたのですが、実際は、まだまだ結構あります。
※やはり、ご年配のお客様に多いです。

そして、なかには、危ない(と思われる)政情不安な国の外国債を多くお持ちの方もいらっしゃいます。

このような資料を税理士が見たら、分かりやすくご説明差し上げるべきでしょう。

「**の外国債は、現在は政情不安で、実際に評価額が大幅に下がっています。どうされましょうか?」

というようにです。

その年に譲渡益があれば、リスクある金融商品を売却して損出しして、通算できます。
これは、税理士でなければできないアドバイスです。

お客様の金融商品の保有状況(安定資産、リスク資産のバランス)にも、気を配りましょう。

財産を3億円以上お持ちの方

「財産債務調書」という制度ができました。

この制度、平成27年度の税制改正で出来た制度です。
確定申告が必要な方で、原則として下記条件を2つとも満たす方が、提出する必要があります。

  • 課税所得が2,000万円を超える人
  • 財産を3億円以上持っている人
    ※他にも細かな条件があります

要は、

「いっぱい利益があって、いっぱい財産を持っている方は、財産の一覧表を出してくださいね!」

という制度です。

以前、このことを、あるお客様にお伝えしたら、

「私はまだ死んでないのに、もう相続税の仮計算をしなきゃいけないの?ひどいよ!」

と、お怒りになるお客様がいらっしゃいました。
※私も、お怒りはごもっともだと思いますが・・・。

これを作るためには、当たり前ですが、お客様の全ての財産の資料をお預かりする必要があります。
※全てといっても、やはり限界がありますから、大きな資産を漏らさないように気をつけて作成することになります。

そのため、お客様からは、

  • 預金残高が分かる資料(通帳等)
  • 保有株式が分かる資料(証券会社からの通知等)
  • 不動産一覧(固定資産税の納税通知書等)

といった資料をお預かりすることになります。

これは、税理士とっては大変ですが、お客様にとってはチャンスです。
それは、(信頼している)税理士に資産一覧を見せることにより、

  • 相続税の概算額
  • 相続税の納税方法(これ重要です)
  • 今後の資産運用方針の確認
  • 遺産の承継方法

といったことを、総合的に相談できるからです。

私も、毎年作成していますが、あるお客様で、課税所得が2,000万円を超えたり、超えなかったりする方がいらっしゃいます。
この「財産債務調書」ですが、作るの、結構大変なんです。
一生懸命作って、結果、課税所得がギリギリ2,000万円超えないと、提出義務はありませんから、作ってみてガックシ、ということが何度かありました。

この制度、税理士にとっては負担ですが、お客様にとっては、税理士に資産構成を見直してもらう良いチャンスですから、税理士から資料請求されたら、ぜひ早めに資料を渡してあげてくださいね。

国外に5,000万円以上の資産をお持ちの方

「国外財産調書」という制度もあります。

この制度、平成24年度の改正で出来た制度ですが、ざっくり言うと、

「国外に5,000万円以上の資産を持っていたら、その旨を税務署に届け出てね」

という制度です。

海外に財産があると、次のようなリスクがあって、色々と大変です。

  • (相続があったときの)名義変更手続きが各国ごとに違って大変
  • 維持管理が大変(特に不動産の場合)
  • 海外の税制改正リスクに対応できない

この制度が始まって、まっさきに慌てた人は、「海外銀行に預金を持っている人」だといいます。
※今まで、利子所得の確定申告をしていなかったためです。

最近、海外の賃貸不動産投資が脚光を浴びていますが、私はあまりお薦めしていません。
というのも、過去のお客様の経験で、海外不動産は空室リスクがある、と考えているからです。
※現地の管理会社は、平気で「今後も空き室が続きますから、1年間のフリーレント契約にしましょう」や、「最初の6ヵ月は家賃を半額にしましょう!」と、言ってくるからです。

場合によっては、海外から日本への資産の組み替えもご提案すべきでしょう。

※夏の、暑い銀座の交差点にて。

相続がおきた時

相続がおき、遺産が相続税の基礎控除を超えるときは、相続税がかかります。

相続税を計算するときは、お亡くなりになった方の「全ての資産・負債」を集計することになります。

ですから、その方の資産構成を見て、税理士は色々なアドバイスを差し上げるべきです。

  • 不動産の割合が多い方
    ・・・今後のリスクを考え、金融資産に組み替えることも検討
  • 金融資産がほとんどの方
    ・・・相続税を節税すべく、早めの贈与を検討
  • 同族株式の割合が多い方
    ・・・実質的な価値はあまりないことを(相続する人以外の)他の相続人に丁寧に説明する
  • 相続人が多い方
    ・・・不動産の共有をできるだけ避け、二次相続での遺産分割案を立案

基本的には、金融資産(特に預貯金)が多い方は、特に心配する必要はないと思います。
相続税は現金で払えますから。

ですが、特に心配すべきが「不動産の割合が多い方」で、具体的には「先祖代々の地主様」です。

地主様の持っている不動産は、大きく分けると、次の2つになります。

  • 底地(他人に貸している土地)
    ・・・もとは自分の土地なのに、借りて建物を建てている人(借地人)の権利割合が多い
  • 賃貸アパート
    ・・・自分の土地に建てているが、銀行から借金して建てている場合が多い

この場合、底地はまず物納を検討した方がよいと思われます。
※借地人の方も、地主様に払っている地代が安くなる可能性があるので。

また、賃貸アパートを銀行借入して建てた方は、借り換えや利率交渉もしてみましょう。
※実際、お客様と銀行に同行して、利率が0.5%程度下がったこともあります。もちろん、そのお客様の資産状況にもよりますが。

相続がおきたときも、お客様の資産構成へのアドバイスをすることが可能です。

※某デパートでのひな祭り人形。

家族構成もチェックすべき

税理士は資産構成だけを見てはいけません。
そのお客様の「家族構成」もチェックすべきです。

というのも、いくら資産を残しても、その資産が、遺されたご家族にとって負担になったら、元も子もないからです。
※賃貸不動産なんて、その代表例です。「賃貸不動産は、持っているだけメリットがある」という時代は終わりました。

例えば、賃貸アパートを管理している不動産屋から、次のような電話がかかってきたら、どうすれば良いのでしょうか?

「今管理させてもらっているAアパートですが、築20年たって、大規模修繕が必要なんですよ。我々がお付き合いしている修繕業者に見積もりを取らせたら2,000万円となりましたが、実行してよいでしょうか?」

これ、自分の事となると、かなり迷いますよ。

  • そもそも修繕なんて必要なのか?
  • その業者の見積もり、高くないか?
  • 修繕費の資金繰り、どうしよう・・・。
  • もしかしたら、もう売却して手放した方がいいのかな?

私自身、実家の賃貸不動産で判断を求められたとき、迷いました。
ですので、不動産や税金のことなんて分からない、遺されたご家族に、そんな判断できるのか?という問題があるんです。

※実際、お知り合いのお知り合いの更にお知り合いの方で、相続した大規模賃貸不動産の維持管理が負担になられて、病気になられてしまった方もいらっしゃいます。

ですから、そのお客様の家族構成をみて、どのように皆様がお考えになっているのか、管理できる力はおありか、ということを考えながら、アドバイス差し上げることが必要です。

また、さらには、そのご家族様の健康状況にも気を遣うようにしましょう。

例えば、確定申告のときに、医療費控除の領収書をお預かりしますよね。
これ、職員に集計を丸投げして、中身を確認しない税理士先生がほとんどだと思いますが、ここから、ご家族様が病気になられているか、分かることもあります。

そうしたら(デリケートな問題なので、なかなか言いづらいですが)

「もし、(身体または精神の)ご病気でしたら、障害年金を請求することができるかもしれませんが、いかがされますか?」

というお声がけも必要になるかもしれません。

※実際に何件か、社労士先生への橋渡しをして、身体の障害年金を請求したこともあります。

「お客様への心配」が「自分の幸せ」につながる

今まで書いたことを、全て実践するのは、結構大変です。
※というより、「相当」大変かもしれません。日々、勉強しなければなりませんし・・・。

ですが、「お客様のことを心配する」を一生懸命繰り返すと、何となくですが、

「家族にどれくらいの資産があれば幸せになれるのか?」
「家族に何をしてあげれば、みんなが幸せになれるのか?」

といったことの「パターン」が、おぼろげながら、見えてくるんです。
※言い過ぎかもしれませんが、私はそう感じています。

あるお客様で、問題のあるお子様(お金使いが荒く、実家の事業引継を考えない、勝手に若い女性外国人従業員を雇ってきてしまう)がいらっしゃいました。
※守秘義務の関係で事実を少し変えています。

その方にご信頼頂いて、そのお子様の幼少期や、そのお客様(父親・母親)がどのようにお子様に接していたのか、お話し頂く機会がありました。
そうすると、私自身(ここでは書けませんが)色々なことを感じました。

その、いわば「反面教師の集まり」が、自分のなかでデータベース化され、そのデータベースをお客様にフィードバックすることができます。

数年前、こんな相続がありました。
とても仲の良いご兄姉がいらっしゃり、複数の不動産を共有(1/2ずつ)して相続したいとのこと。

「不動産の共有は避けた方が良いですよ。共有にすると、処分したり、維持管理が面倒になりますから」

私が、教科書的な原理原則のお話しをすると、妹さんが、こうおっしゃるんです。

「石橋先生のおっしゃることは、とても良く分かります。ですけれど、私たちはとても仲良しなんです。それにこれらの不動産、保険的な意味合いで数年間は持つつもりですが、その後は売却して、仲良く、お金を半分こする予定なんです。ですから、共有でいいんです」

このお話しを聞き、そのご兄姉の話しぶり、仲の良さを見て、私は、

「このお二人なら、大丈夫だろう」

ということで、それ以上、強くは言いませんでした。

その数年度、実際に仲良く、そのご兄姉は不動産を全て売却され、円満に相続は終わりました。

「この方達なら大丈夫だろう」

その判断・アドバイスも、税理士の経験値によると思います。
※もちろん、見誤ることも多いんですが・・・(^^)

お客様の資産構成について考えてみました。
ぜひ、資産構成だけでなく、そのお客様の「人生」についても、考えてみてくださいね。

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