歴史に詳しいと、どんなメリットがあるのか?

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よく、「歴史を勉強しなさい」と言われます。
ですが、なぜ、歴史を勉強しないといけないんでしょうか?

※愛読書「逆説の日本史」シリーズ。事務所内の打ち合わせスペースにて。

歴史に詳しいと、どんなメリットがあるのか?

歴史に詳しいと、次のようなメリットがあると思います。

  • 教養がある人、と思われる
  • 他人を説得する際の説得材料となる
  • 過去の出来事から学ぶことができる

人生、色々な場面で、歴史の知識を生かす場面があります。
例えば、人前のスピーチで、歴史の出来事を引用したスピーチをすれば、何やら高尚な?立派な?スピーチに感じられるかもしれません。

また、年配の方との雑談では、会話のきっかけにもなるかもしれません。
知識、体験、雑学が多いと、会話も弾みます。

ですが、私が一番、大切だと思うのは、

「歴史から学ぶ=過去の出来事から学ぶ」

ということです。

「歴史から学ぶ」とは、どのようなことを言うのか?

歴史を学ぶためには、大きく分けて2つのポイントがあると思います。
それは、

  • 物語(ものがたり)として考えること
  • 全ての歴史はつながっている(=相関関係関係がある)と考えること

学校で習う歴史(教科書に書いてある説明)とは、例えば、次のようなものではないでしょうか?

織田信長の似顔絵イラスト

「織田信長(おだのぶなが)」

1534年6月23日~1582年6月21日

  • 尾張(名古屋)の大名
  • 天下統一を果たした
  • 楽市楽座を行った
  • 比叡山焼き討ちで多くの信徒・門徒を虐殺した

これだけ眺めると、

「天下統一を果たして凄いとは思うけど、悪いこと(比叡山焼き討ち)をして、多くの善良な人を殺した人でしょ?」

という感想を抱く人が殆どだと思います。

※教科書の解説を読むと、上記のような感想を抱かれるのではないでしょうか?

ですが、別の見方もあります。
※以下は、私の愛読書「逆説の日本史」の受け売りですので、あしからず(^_^)

(1)楽市楽座を作った反動

「楽市楽座(らくいちらくざ)」は、織田信長が始めたものとされています。

楽市楽座の「楽市(らくいち)」とは、今で言うフリーマーケットで、要は、「自由に商売していいですよ」ということです。

商売の基本は、
「良い商品を安く売ること」
です。

ですが、当時の日本は、お店を開く場所、開いていい人、商品の定価、全てが決まっていて、これに反する行為をすると、最悪、殺されてしまうこともあったようです。

信長は、この規制を撤廃しました。

また、「楽座(らくざ)」も重要です。

楽座とは何でしょうか?
この「座」とは、いわば「営業権」や「特許権」といったようなものです。

私の愛読書「逆説の日本史」にも出てくるのですが、当時、油は貴重でした。
ですが、作り方はある程度、広く知れ渡っていて、作ろうと思えば、結構、作れた人もいたそうです。

ところで、勝手に油を作ってはいけません。
お上(地域の大名や、お寺)の許可を取ってからやりませんと、大変なことになります。
というのも、勝手に作って販売すると、彼らが兵隊を送り込んで威嚇してくるからです。

「おい!俺らに無断で売りやがって!まず、あいさつ(=上納金を持ってこい)に来るべきだろう!」

怖いですね~(T-T)

信長は、この既得権を撤廃したのです。
そりゃあ、恨まれます。

ですが、民衆にとっては喜ばしいことです。
良い商品が安く手に入る訳ですから。

(2)政教分離をいう観点

武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)という人がいます。

武蔵坊弁慶の似顔絵イラスト

この武蔵坊弁慶、考えると、不思議な格好をしています。
というのも、

  • お坊さんの格好をしている
  • 武器(なぎなた)を持っている

なぜ、お坊さんが武器を持っているのでしょうか?

武蔵坊弁慶は僧兵(そうへい)です。
僧兵とは、「お坊さん」でもあり、「兵隊」でもあるということです。

現代では、お坊さんはお坊さんであり、兵隊さんは兵隊さんです。
※兼業している人はいません(=政教分離)

そうすると、お寺の意向に沿わないことをすると(=勝手に商品を作って売ると)お寺から僧兵が送り込まれて、下手をしたら殺されてしまいます。

お寺は宗教施設です。
信徒、門徒の信仰心から成り立っています。
そうすると、お寺の幹部は、その信仰心を利用して、
「あいつは、仏敵(ほとけさまの敵)だから、滅ぼしてしまえ!」
として、信徒・門徒を送り込んで、相手を滅ぼすことも可能となってしまいます。
※事実、比叡山延暦寺も、たびたび、各所に僧兵を送り込んで、多くの民衆が亡くなっています。

信長も、滅ぼす前に、話し合い(=「安土宗論。お坊さん同士ディベート会」)等を開き、再三、「信じるのは良いが、武力を持つな」と、説得したそうです。
ですが、比叡山延暦寺は応じず、やむなく、焼き討ちとなったそうです。

「政教分離」という考え方があります。
※政治と宗教は一緒にしてはならない、という考え方です。

ということは、裏を返せば、昔は「政教一致」だったということです。

なぜ、政教分離となったのでしょうか?
これは、人間が長い歴史の中で、
「宗教勢力が政治(武力を含む)を持つと、良いことがない」
という経験のなかから生み出された知恵です。

信長は「世界に先駆けてこれを実践した」という見方もできるわけです。

この後、豊臣秀吉、徳川家康と時代は移りますが、信長が宗教勢力から武力を取り上げる道筋を作ってくれたからこそ、今の日本がある、という見方もできるかもしれません。

これは、歴史の教科書だけではわかりません。
大きな物語として、各出来事のつながりをおさえる必要があります。

私が「逆説の日本史」を愛読しているのは、そのような理由からなんです。
※著者の井沢元彦先生は、ご出身は小説家がいらっしゃっていて、物語を書くのに長けていらっしゃいます。まだ読んでいない方は、戦国時代で盛り上がる9巻目くらいから入るのがオススメです。

実際に、歴史の知識が生きる場面とは?

冒頭でもお伝えしたように、私は、

「歴史から学ぶ=過去の出来事から学ぶ」

ということだと思っています。

私の仕事上、お客様と一緒に判断を求められることがあります。
例えば、社長さんからは会社の人事異動やリストラ、資産家の方からは不動産の売却や投資のタイミングなど・・・。

これらのような重要な決断に、正解はありません。
というのも、今決断したとしても、将来の経済状況、天変地異で当初の予測と違った結果となるからです。

成功した経営者のなかで「オレは全て予測していた」とおっしゃる方もいます。
ですが、それは結果論です。全てを見通せる人間はいません。
事実、アメリカ政治の中枢部にいる方々は、トップエリートで超優秀なのかもしれませんが、それらの方々も、テロや戦争を確実に予測できていないではありませんか。

そのような状況のなか、どうしても決断しなければいけない。
そのような状況では、歴史が判断材料の一つになると思います。

例えば、今の状況が、「待つのが得策」なのか「攻めるのが得策」なのか?
判断に迷ったとしましょう。

「待つのが得策」と考えている人は、徳川家康の生涯を思い浮かべてみると良いでしょう。
家康といえば「待ち」の人で有名です。
待つためには、健康に気遣い、とにかく平穏無事に暮らし、最後に大勝負(大阪冬の陣、夏の陣)で天下をとりました。

私は、基本的には「待つこと」を選択することが、経営や投資にとって、結果的に良い選択になることが多いと思います。
※もちろん、ただ待つだけではダメです。努力して、努力して、最後に重要な判断をするときに、待ちの姿勢で決断するということです。

以前、株式投資(投資信託)をされたお客様がいらっしゃいました。
その方は、数億円をその投資信託につぎ込みました。
※証券会社の営業マンいわく「絶対に利益がでますよ~。」との営業トークで購入を決断されたそうです。

ですが、リーマンショックでいきなり購入時の6割に下落。
そのことをお客様にお聞きしたら、

「いや~。石橋先生。しょうがないですよ。経済は循環してますから、いずれ、値段が戻るでしょう~。待ってみますよ~。」

この「待ち」の姿勢はスゴイ!、と、私は感じました。
私ならば、びびってしまって、すぐに売ってしまうかもしれません(^^)/
※それ以前に、そもそも投資をしないかもしれませんが・・・。

その2年後のことです。
経済が回復し、投資信託は購入価額の1.5倍になり、多額の売却益が発生しました。
まさに、お客様の予想通りになったわけです。

世の中の全てのことは「繰り返し」です。
上がったものは下がる。下がったものは上がる。
ですが、上がりすぎ、下がりすぎのタイミングが、必ずあります。

家康であれば、下がりすぎの時期(人質に取られた幼少期、秀吉の軍門に降った時期)に我慢し、上がりすぎのときに売って刈り取る(大阪冬の陣、夏の陣)、そして、決断の時期(天下分け目の関ヶ原)の時は、躊躇なく勝負をする。

家康の人生で一貫しているのは、

「待ちの姿勢をするために全てを費やしている」

ということが言えるんだと思います。

健康しかり、人間関係しかり、自分の感情コントロールしかり(三方ヶ原の戦いで武田信玄に破れた後に書かせた肖像画で自分を戒める)。

家康は73歳まで生きました。
家康の人生と、ご自分の人生を照らし合わせ、いま、自分がどこにいるのか?
それを確認することで、今後の決断の指標になるかもしれません。

歴史から「生きた」感情を学ぶ

また、歴史からは、人間の様々な人生、感情を学ぶことができます。

「倭寇(わこう)」と出来事があります。
これは、鎌倉時代から室町時代あたりに発生した、日本人の海賊のことです。

なぜ海賊行為をするのか?
私は、単に、荒くれ者どもが、贅沢をしたいからだと思っていました。
※倭寇は、商船を襲って金品を略奪していました。

ですが、高校時代の歴史の先生が、授業中にこう言ったのです。

「確かに、海賊行為なんか、しちゃいけない。人のものを盗むなんて、最悪の行為だからね。だけどみんな、考えてほしい。家に奥さんと子供がいて、食うものもなく、ひもじい思いをして死にそうだったら、何とかしてあげなきゃ?って、思うでしょ。だから、海賊行為をした。そんな人もいるはずなんだよ。歴史には二面性がある。片方の見方からだけ見ちゃ、だめなんだよ」

この先生のお言葉は、今でも、私の記憶に残っています。
おっしゃるとおり、歴史には「二面性」があります。

私の友人で、小学校教師をしている男性がいます。
この友人、私と同じく歴史好きで、授業中に小学生に歴史の話しをよくするそうです。

「小学生に歴史なんか、難しい歴史の話しなんて、分かるわけない」

そう思う方もいるでしょう。
ですが、分かりやすく説明すると、頭の良い子は分かるそうです。

「先生の話し、分かった!何かあっても、今の考え方じゃなく、当時の人の気持ちになって考えないとダメなんだね!」

こう言われて、その友人も「教師冥利につきる」と言っておりました(^_^)

学問をメリットだけで考えてはいけませんが、歴史を学ぶことは、とても大切です。
入口は小説、ゲーム、何でもいいと思います。
※私も「信長の野望」が入口でした。

ぜひ、皆さんも、歴史にふれ、学んでみてください。

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